WOTAで事業企画を担当する李垣さんに話を聞きました。広告のプランナーやマーケティング戦略コンサルタントを経て、現在は水問題解決のために他社や自治体を巻き込んだビジネスエコシステムを模索する李さん。水という分野に飛び込んだ背景には、「人類規模の課題解決に挑戦したい」という思いがあったそうです。(聞き手:ライター松本友也)
──WOTAにおける李さんの役割はどのようなものですか。
ずばり、水問題をビジネスで解決するための企画全般、という感じですね。WOTAだけでは到底不可能な「水問題の解決」というゴールに向けて、説得力のあるロードマップを作り、内外の人々を巻き込むためのさまざまな事業を企画、推進するのが主な仕事です。
具体的には、日本各地の自治体が抱える水道事業の財政課題を長期的な視点で分析したり、水問題に悩む地域住民の家を訪問して調査を行なったり、そうした課題を持続可能なかたちで解決するためのビジネスモデルを立案したりしています。
WOTAのようなインパクトスタートアップの場合、自社だけでプロジェクトが完結することはありません。パートナー企業や自治体など、さまざまなステークホルダーとともに社会課題の解決に取り組みます。水問題解決に関わる人々全員をハッピーにするエコシステムを設計することが、事業企画の重要な役割だと考えています。
──多岐にわたる業務の中で、最近特に力を入れたプロジェクトは何ですか。
大きな節目になったのは、2023年8月に実施した「Water 2040」発表会の準備です。WOTAはこのイベントで、愛媛県や東京都利島村といった複数の自治体とともに「2040年までに上下水道財政の悪化を食い止める」という目標を宣言し、そのために各自治体で進めている「小規模分散型水循環システム」の実証実験についても発表しました。
苦労したのは、日本全体の上下水道の財政問題を分析し、実現可能な解決策を導き出すことでした。これまで水道インフラの劣化や料金収入減少といった課題については、「このままでは続かない」という認識はあるものの、「課題の全体像はどれほどの規模で、いつまでに何をすればどれほどの課題が解決できるか」を明確かつ定量的に示すデータはなかったと思います。
そこで私は自治体財政分析のエキスパートたちと協力し、上下水道における様々な財務データを集めて今後の見通しをシミュレーションしました。その結果、現状の解決手段の物理的限界と、考えられる代替的な解決手段の有効性を試算することができました。