WOTAで国際的なリサーチとエンジニアリングを担当するハルダー・サヤニさんに話を聞きました。インドの州政府で分散型の水処理システムに携わり、政策分野での研究歴もあるサヤニさん。母国での経験と両親からの教えが、「水の不平等」の解決を目指す原動力となったそうです。(聞き手:ライター松本友也)

< WOTA採用ページへ戻る


20231130_wota_0088.jpg

インドの州政府で、分散型システムに携わる

──WOTAでの仕事内容について教えてください。

水処理に関する国際的な基準や政策をリサーチするのが私の仕事です。一度使用した水を再生利用するためには、一定の水質基準をクリアする必要があります。従来の再生水は、おもに農業や景観づくりに利用されることが多く、ガイドラインもその用途に合わせて作られています。しかし、WOTAが目指しているのは、家庭で安全に利用できる品質での水の再生なのです。生活用水の再生利用についてはまだ国際的なガイドラインが十分に整備されていないため、各国の水質基準や政策を網羅的に調査しているところです。

ガイドラインが整備されていないなかで安全性を保つためには、エンジニアリング的な観点で独自に水質を分析することも必要です。どこまで病原体や細菌を除去できれば安全な生活用水と言えるのか。私はエンジニアとして、そうした判断基準を作る役割も担っています。

──水処理分野の専門性はどこで得たのでしょうか。

インドの大学で化学工学を学んだ後に、オーストラリアに渡って工学修士号をとりました。専攻は水処理と水再生に関するエンジニアリングです。

修士号取得後はインドに戻り、ハリヤナ州政府でエンジニアとして分散型排水処理プラントの設計に携わりました。インドの上下水道は、日本のように広くは整備されてはいません。とりわけ農村部においては、各家庭の生活排水が未処理のまま窪地などに排出されていることも多々あります。そのせいで、ただでさえ減少している地下水源が汚染されてしまう可能性もありました。

私は、この排水をできる限り回収・濾過し、衛生上の問題を軽減するためのシステムを設計していました。大規模なプラントを設けることはできないうえに、地域によって使用できる技術も、排水の種類もさまざまです。必然的に分散型のシステムを採用することになり、私はここで水処理エンジニアとしての実務経験を積むことになったのです。

20231130_wota_0018.jpg